座ってできる「好き」「必要」片付け術:体力の負担を減らし無理なく整理
片付けたい気持ちはあるのに、どこから手をつけて良いか分からなかったり、一度にたくさんのモノを動かす体力に自信がなかったりして、なかなか踏み出せない。そのようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
立ちっぱなしでの作業は足腰に負担がかかりますし、広い範囲を一気に片付けようとすると、途中で疲れてしまったり、モノの多さに圧倒されて挫折しそうになったりすることもあります。
しかし、片付けは必ずしも「大がかりな立ち仕事」である必要はありません。実は、座ったまま、そして短い時間でも効果的に進められる場所はたくさんあります。
この場所別「好き」「必要」ガイドでは、体への負担を抑えながら、無理なく少しずつ家を整えるための「座ってできる片付け」の方法をご紹介いたします。
座って片付けることのメリット
座って片付けを行うことには、いくつかのメリットがあります。
- 体への負担が少ない: 立ちっぱなしや重いモノの移動が少ないため、足腰への負担が軽減されます。
- 集中しやすい: 目線の高さで作業ができるため、目の前のモノに集中しやすくなります。
- 短時間で区切りやすい: 「この引き出しだけ」「この棚の一段だけ」というように、範囲を決めやすいため、15分や30分といった短い時間でも完了させやすいです。
- 心のハードルが下がる: 「座って少しだけ」と思えば、片付けに対する億劫な気持ちが和らぎ、始めやすくなります。
体力に不安がある方や、一度にまとめて片付ける時間がない方にとって、「座って片付け」は非常に有効な方法と言えるでしょう。
「好き」と「必要」でモノを見分ける基本
座って片付ける際も、基本的な考え方は同じです。目の前のモノを「好き」か「必要」か、そしてどちらでもない「不要」かに分けていきます。
- 「好き」なモノ: 見ているだけで心が和む、使うたびに気分が上がる、大切な思い出がある(ただし、厳選したもの)。心がときめくかどうか、という基準も有効です。
- 「必要」なモノ: 日常的によく使う、ないと困る、今後使う予定がある、保管義務がある書類など。機能性や使用頻度が判断基準になります。
- 「不要」なモノ: 壊れている、傷んでいる、もう使えない、長年使っていない(例:1年以上)、複数あるのに使い切れない、期限が切れている、特に愛着や必要性を感じないモノ。
この「好き」「必要」の視点を持つことで、単に捨てる・捨てないだけでなく、なぜ手元に置くのか、という理由が明確になり、判断がしやすくなります。
座ってできる具体的な場所と片付け方
家の中には、座って片付けやすい場所がたくさんあります。いくつか例を挙げてみましょう。
1. リビングのコーヒーテーブル周りや引き出し
- 対象: リモコン、読みかけの本や雑誌、コースター、筆記用具、小物入れの中身など。
- 実践: コーヒーテーブルの周りや、テーブルの下、または近くにある引き出しの中身を取り出します。一つずつ手に取り、「好き」か「必要」か、それとも「不要」か判断します。
- 不要なモノ: 読み終わった古い雑誌、使わない試供品、壊れたペンなどは手放します。
- 必要なモノ: よく使うリモコン、常用する薬、筆記用具などは、定位置を決め、すぐに取り出せるように整理します。
- 好きなモノ: お気に入りの小物、思い出の写真などは、飾る場所や保管場所を決めます。
2. ダイニングテーブルの一部や引き出し
- 対象: 郵便物、書類、文具、薬、DM、子供が持ち帰ったプリントなど。
- 実践: 食事の時間以外に、ダイニングテーブルの一部を作業スペースにします。テーブルの上に一時的に置かれているモノや、ダイニングテーブル周りの引き出しの中身を整理します。
- 書類: 郵便物や書類は、「必要(要対応・保管)」、「不要」に分けます。「必要」なものはさらに「すぐやる」「後でやる」「保管」などに細分化し、一時保管場所を作ります。保管が必要な書類は、クリアファイルやボックスに入れてまとめておくと良いでしょう。
- 文具・薬: よく使う文具や薬は、まとめて引き出しに収納するなど、使いやすくします。
- 不要なモノ: 古いDM、もう使わない薬、インクの切れたペンなどは処分します。
3. デスクや棚の一段
- 対象: 書類、本、文具、趣味の道具、コード類など。
- 実践: デスクの引き出し一つや、本棚・カラーボックスの一段など、小さな範囲を選んで集中して片付けます。
- 書類・本: もう読まない本や、不要な書類は手放します。必要な書類は種類ごとに分け、ファイルボックスなどを活用して立てて収納すると見やすくなります。
- 文具・小物: 使っていない文具や、絡まりやすいコード類は整理します。小さすぎるモノは、ケースや仕切りを使って迷子にならないようにします。
- 趣味の道具: 使っているモノ、これからも使う「好き」なモノは手元に置き、もう興味がなくなった、壊れているといったモノは手放す検討をします。
4. ドレッサーや化粧台
- 対象: 化粧品、アクセサリー、ヘアアクセサリー、試供品など。
- 実践: ドレッサーの椅子に座り、引き出しやテーブルの上に置いてあるモノを一つずつ確認します。
- 化粧品: 使用期限が過ぎている、肌に合わない、もう使わない化粧品は処分します。今使っているモノ、「好き」でこれからも使うモノだけを残します。種類ごとにケースにまとめると使いやすくなります。
- アクセサリー: 壊れているモノ、デザインが古くて使わないモノは見直します。お気に入りのアクセサリーは、傷がつかないように仕切りのあるトレーやケースに収納します。
- 試供品: たくさん溜まっている場合は、使うかどうか判断し、使わないものは手放します。
捨てられないモノ、思い出の品との向き合い方
座って片付けていると、特にドレッサー周りや引き出しから、昔使っていた化粧品、初めてもらったアクセサリー、友人からの手紙など、思い出の品が出てくることがあります。これらは「必要」ではないけれど、「好き」(愛着がある)なモノかもしれません。
感情的な価値が高いモノをすぐに手放すのは難しいものです。無理に捨てる必要はありませんが、すべてを残しておくと収納スペースが圧迫されます。以下の方法を試してみてはいかがでしょうか。
- 厳選する: 思い出の品の中でも、特に大切にしたいモノ、見るたびに良い記憶が蘇るモノを数点だけ選びます。
- 写真に残す: モノ自体は手放しても、写真に撮っておけばいつでも見返すことができます。アルバムにまとめたり、デジタルで保存したりするのも良い方法です。
- データ化する: 手紙やプリント類は、スキャンしてデータとして残すことも可能です。
- 一時保管場所を作る: 「思い出ボックス」のような一時的な保管場所を作り、期間を決めて(例:半年や1年)保管します。期間が過ぎた時に改めて見直すと、意外と手放せることもあります。
- 感謝して手放す: モノに感謝の気持ちを伝え、「ありがとう」と言って手放すことで、心の整理がつきやすくなることもあります。
大切なのは、モノに支配されるのではなく、ご自身が心地よく暮らすために、モノとの関係を見直すことです。
無理なく続けるためのコツ
座って片付けを始めたら、それを継続するための工夫も大切です。
- タイマーを活用する: 「今日は15分だけ」「この引き出しの片付けが終わるまで」など、時間を区切ったり、範囲を決めたりして取り組みます。
- 完璧を目指さない: 一度ですべてを綺麗にしようと思わないことです。今日はここまで、と割り切ることも大切です。
- 「ついでに片付け」を取り入れる: テレビを見ながらリモコン周りを整える、郵便物を確認したついでに不要なDMを捨てるなど、他の行動とセットで行うと習慣になりやすいです。
- 片付けをルーティンにする: 「毎週日曜日の朝に30分」「寝る前に15分」など、片付ける時間や曜日を決めておくのも効果的です。
- 記録をつける: 片付けた場所や時間を簡単なノートやメモに書いておくと、達成感が得られ、モチベーション維持につながります。
- 休憩を挟む: 疲れたら無理せず休憩を取りましょう。体への負担を減らすことが目的ですから、頑張りすぎは禁物です。
片付け後の空間と活用例
小さな場所でも片付けが進むと、その変化を実感できます。物が減り、整理されることで、見た目がすっきりするだけでなく、使い勝手も格段に向上します。
- 探し物の時間の削減: どこに何があるか分かりやすくなり、探し物をする時間が減ります。
- 掃除がしやすくなる: モノをどかす手間が省け、簡単に掃除機をかけたり拭き掃除をしたりできます。
- 心理的なゆとり: 視覚的な情報が減ることで、脳への負担が減り、リラックスしやすくなります。
- スペースの有効活用: 片付いたスペースに、お気に入りの写真や小物を飾る、読書のためのスペースを作るなど、心地よい空間づくりに活用できます。
座ってできる小さな片付けは、体力的な負担を減らしつつ、着実に家のモノと向き合うための有効な方法です。
まとめ
片付けは一朝一夕に終わるものではありません。特に長年かけて溜め込んだモノと向き合うには、時間とエネルギーが必要です。しかし、「座ってできる片付け」という視点を取り入れることで、体への負担を減らし、ご自身のペースで無理なく進めることができます。
引き出し一つから、棚の一段から、あるいはダイニングテーブルの上だけでも構いません。「好き」と「必要」を見分けることを意識しながら、目の前のモノに一つずつ丁寧に向き合ってみてください。
小さな一歩でも、確実に家は整っていきます。そして、片付いた空間は、きっと日々の暮らしにゆとりと心地よさをもたらしてくれるはずです。ご自身の体と心に優しく、片付けを進めていきましょう。