モノとの向き合い方を変える「好き」「必要」習慣:無理なく片付けを続けるヒント
お子様が独立され、ご自宅のモノとじっくり向き合う時間が増えた方もいらっしゃるかもしれません。リビングや押し入れに長年しまわれたままのモノ、思い出の品など、一つ一つを見直すのは大変な作業に感じられることと思います。一度にすべてを片付けようとすると、体力的な負担や、何から手をつければよいかという迷いから、つい後回しにしてしまうこともあるのではないでしょうか。
当サイトでは、片付けを単なる「捨てること」ではなく、「今、そしてこれからの暮らしをより良くするために、本当に大切なモノを選ぶこと」と捉え、「好き」で残すモノと「必要」で残すモノを区別する考え方をご提案しています。そして、この「好き」と「必要」で判断する習慣を日常に取り入れることが、無理なく片付けを続け、すっきりとした空間を保つ鍵となります。
今回は、この「好き」「必要」で判断する習慣を身につけ、片付けを無理なく続けるための具体的なヒントをご紹介いたします。完璧を目指すのではなく、ご自身のペースで、楽しみながら実践していただければ幸いです。
「好き」と「必要」の判断習慣化がもたらすメリット
片付けは一度行えば終わり、というものではありません。日々の生活の中でモノは自然と増えていきます。だからこそ、「好き」と「必要」で判断する習慣を身につけることが大切なのです。この習慣ができると、以下のようなメリットがあります。
- モノが増えすぎない: 買い物の際や、何かを受け取った際に、「これは本当に好きかな?」「今、必要かな?」と自然に考えるようになります。
- 要不要の判断に迷いが減る: 判断の軸が明確になるため、モノと向き合う際の迷いが少なくなります。
- 片付けの負担が軽減される: 大掛かりな片付けの必要がなくなり、日々の小さな見直しで済むようになります。
- リバウンドしにくくなる: 片付いた状態を自然に維持できるようになります。
- 探し物が減る: 必要なモノがどこにあるか把握しやすくなります。
習慣化のための「好き」「必要」判断の考え方
基本的な判断基準は「今使っているか」「これからも使うか」といった「必要」の視点と、「見ていて心地よいか」「使うと心が満たされるか」といった「好き」の視点です。これに加えて、習慣化のために意識したい考え方があります。
- 「必要かも?」に立ち止まる: 今は使わないけれど、「いつか必要になるかも」というモノが一番判断に迷います。こうしたモノには、「〇ヶ月様子を見る」「特定の条件(例: 引っ越し、新しい趣味を始めるなど)を満たしたら考える」といった保留期間やルールを設けてみましょう。一時置き場(片付け途中のモノを一時的に置いておくスペース)を活用し、期限を決めて見直すのも有効です。
- 「もったいない」の罪悪感と向き合う: 高かったモノ、いただいたモノなどを手放すことに罪悪感を感じることは自然な感情です。しかし、「使わずにしまい込んでいる方が、モノにとっても、ご自身にとっても『もったいない』」と考えてみましょう。感謝の気持ちを持って手放す、必要としている人に譲る、といった方法も検討できます。
- 思い出の品は特別枠で: 長年大切にしてきた思い出の品は、「必要」というよりは「好き」や「大切」の視点が強くなります。これらを「好き」と「必要」という日常の基準だけで判断するのは難しいものです。これらは他のモノとは別に考え、一定量を決めて保管したり、写真に撮る、デジタル化するなど、手放す以外の方法も含めて整理することを習慣にするのが良いでしょう。
無理なく「好き」「必要」判断を習慣にする具体的なステップ
「習慣にしましょう」と言われても、何から始めれば良いか迷うかもしれません。以下に、体力的な負担を減らし、無理なく続けられる小さなステップをご紹介します。
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一日一段、一日一つから始める:
- まずはリビングの引き出し一段、キッチンの棚一つ、玄関の靴箱の一部など、ごく小さなスペースを選んでみてください。
- そこにあるモノを手に取り、「好きかな?」「必要かな?」と問いかけます。
- すぐに判断できないモノは、先ほど述べた一時置き場へ移します。
- この作業を毎日、あるいは数日に一度、短時間(例えば10~15分)行うことから始めます。タイマーを使うのもおすすめです。
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日常の中で「手に取った時」に判断する:
- 引き出しを開けた時、何かを取り出す時など、日常の中でモノを手に取るたびに、「これは今の私にとって、『好き』かな?『必要』かな?」と問いかける癖をつけます。
- 使っていないと感じたら、その場で一時置き場へ移動させる、あるいはすぐに手放す(ゴミ箱に入れるなど)といった行動をしてみます。
- これは特別な時間を作る必要がなく、日常の動作の中でできるため、負担が少ない方法です。
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購入・受け取り時に立ち止まる:
- 新しいモノをご自宅に迎える際に、「これは本当に『好き』かな?」「本当に今の私に『必要』かな?」と一度立ち止まって考えてみましょう。
- 衝動的な購入や、何となく受け取ってしまうことを減らすだけで、モノが増えすぎることを防ぐことができます。
- 「一つ買ったら一つ手放す」といったルールを設けるのも効果的です。
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「一時置き場」の定期的な見直し:
- 判断に迷って一時置き場に入れたモノは、そのまま放置しないことが重要です。
- 週に一度、月に一度など、定期的に一時置き場を見直す日を決め、再度「好き」「必要」で判断する習慣をつけましょう。
- 期限を決めておくと、見直しのタイミングが明確になります。
場所別の「好き」「必要」習慣化ヒント
- リビング: テーブルの上やソファ周りに「とりあえず置いた」モノを、寝る前に「好き?必要?」で見直し、それぞれの定位置に戻すか、一時置き場へ移動させる習慣をつけましょう。飾り棚の小物なども、定期的に手に取って「好き」かどうか確認すると、心地よい空間を保てます。
- キッチン: 調理中に「あれ、これっていつから使ってないかな?」と感じた調味料や調理器具を、その場で一時置き場へ。冷蔵庫の中も、食材を使う際に「必要」かどうか判断し、古いものから使う、期限切れはすぐに処分する習慣が大切です。
- クローゼット: 服を選ぶ際に、「そういえばこれ、この1年着てないな」と感じた服を、一時置き場や「見直しボックス」へ。季節の変わり目にまとめて見直すだけでなく、日常の中で着る・着ないの判断を意識することで、無理なく整理が進みます。
片付け習慣がもたらす、その先の暮らし
「好き」と「必要」でモノを判断し、整理する習慣が身についてくると、物理的な空間がすっきりするだけでなく、心にも変化が訪れます。
探し物をする時間が減り、生まれた時間を趣味や休息に使えるようになります。必要なモノ、好きなモノだけに囲まれることで、心が満たされ、穏やかな気持ちで過ごせる時間が増えるでしょう。また、モノを大切にする意識が高まり、一つ一つのモノに愛着を持って接するようになります。
片付けは、過去を整理し、今を見つめ、未来の暮らしをより豊かにするためのプロセスです。完璧を目指す必要はありません。今日から、小さな一歩として、目の前のモノ一つを手に取り、「好きかな?必要かな?」と問いかけてみませんか。その小さな習慣が、きっと心地よい暮らしへと繋がっていくはずです。