「好き」は飾って「必要」は使いやすく:リビングが整うメリハリ収納術
モノとの向き合い方:「好き」と「必要」で始めるリビングの片付け
リビングは家族が集まり、日々の生活の中心となる場所です。しかし、気づけばモノが増え、どこか落ち着かない空間になってしまうことも少なくありません。長年暮らしを共にしていると、どうしてもモノは溜まっていくものです。
以前の記事では、モノの要不要を「好き」か「必要」かで判断する方法についてご紹介いたしました。今回は、その考え方を一歩進め、手元に残すと決めた「好き」なモノと「必要」なモノを、どのようにリビングに配置し、収納していくかという点に焦点を当てます。
「片付けてもすぐに散らかってしまう」「どう収納したら使いやすいのか分からない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。「好き」と「必要」で分ける収納を実践することで、リビングは心地よく、そして使い勝手の良い空間に生まれ変わります。体力的に一度に大掛かりな片付けは難しいと感じている方も、少しずつ取り組める具体的なアイデアをご紹介いたします。
なぜ「好き」と「必要」でモノのしまい方を変えるのか
モノを「好き」と「必要」に分けて収納することには、いくつかのメリットがあります。
まず、「好き」なモノは、見ているだけで心が満たされたり、気持ちが安らいだりするものです。こうしたモノを適切に飾ることで、リビング空間に彩りや温かみが生まれ、よりパーソナルで心地よい雰囲気を作ることができます。目に触れる場所に「好き」なモノがあることで、日々の暮らしに小さな喜びを感じられるでしょう。
一方、「必要」なモノは、日々の生活をスムーズに進めるために不可欠なものです。リモコン、読みかけの本、メガネ、常用薬、文房具など、使う頻度が高いモノを「使いやすい場所」に「すぐに取り出せる形」で収納することで、探す手間や時間が省け、ストレスを軽減できます。
このように、「好き」と「必要」という異なる性質を持つモノを、それぞれの目的に合った方法でしまうことで、見た目の美しさと機能性を両立させることができるのです。
「好き」なモノを大切に飾るアイデア
「好き」で残すと決めたモノたちは、あなたの個性や思い出を映し出す大切な存在です。これらをただしまうのではなく、空間に「飾る」という意識を持つことで、より一層輝かせることができます。
1. 見える場所に「指定席」を作る
お気に入りの写真立て、旅行先で買った小さな置物、集めている雑貨など、「好き」なモノの中でも特にお気に入りの数点を選び、リビングの特定の場所に飾る「指定席」を作ってみましょう。
- 飾り棚やシェルフ: 目線の高さにある飾り棚やシェルフは、お気に入りを飾るのに最適です。ぎゅうぎゅうに並べるのではなく、少し余白を持たせることで、一つ一つのモノが引き立ちます。
- テレビ台の上: テレビ台の上は、自然と視線が集まる場所です。大きすぎない、テレビの邪魔にならない範囲で、お気に入りのアイテムを配置してみましょう。
- ニッチ空間: 壁のくぼみ(ニッチ)がある場合は、そこをギャラリーのように活用できます。
- コーヒーテーブルの上: 季節の小花を飾ったり、お気に入りの本の隣に小さなオブジェを置いたりするのも素敵です。
2. コレクションは「まとめて魅せる」
趣味で集めているコレクション品などは、まとめて飾ることで統一感が生まれ、立派なインテリアになります。
- ガラスケース: 大切なコレクションは、ホコリから守りつつ鑑賞できるガラスケースにしまうのがおすすめです。
- 同じ種類のボックス: 細かいモノが多い場合は、同じデザインのボックスにまとめて棚に並べると、すっきり見えつつコレクション感も出せます。
3. 飾りすぎを防ぐ見直しの習慣
「好き」なモノも、増えすぎると雑然とした印象を与えてしまいます。飾るスペースには限りがあると考え、定期的に見直す習慣を持ちましょう。新しいお気に入りを飾る際は、一つか二つ、既存のモノと入れ替えるようにすると、常に新鮮さを保ちながら飾りすぎを防ぐことができます。
「必要」なモノを使いやすくしまうアイデア
日々の暮らしで頻繁に使う「必要」なモノは、「どこに」「どうしまうか」が使い勝手を大きく左右します。「使う場所の近くに」「アクション数を少なく」しまうことを意識しましょう。
1. 「使う場所」の近くにしまう
これは片付けの基本中の基本です。
- テレビやエアコンのリモコン: テレビ台の引き出し、またはソファの横に置いたサイドテーブルの上やカゴの中など、使う場所から手を伸ばせば届く範囲に定位置を作ります。
- 読みかけの新聞や雑誌: コーヒーテーブルの下の棚、マガジンラック、またはソファ横のバスケットにまとめておきます。
- 文房具: リビングで書き物やちょっとした作業をすることが多い場合は、使う場所に小さなペン立てや引き出しを用意します。
2. 「ワンアクション」で取り出せるように
「引き出す」「開ける」「フタを取る」など、モノを取り出すまでの動作(アクション)が少ないほど、使うのもしまうのも楽になります。
- オープンな収納: 頻繁に使う書類や本は、扉のないオープンシェルフにファイルボックスやブックエンドを使って立てて収納します。
- 引き出しの中の整理: 引き出しの中に仕切りケースを使うと、モノがごちゃつかず、どこに何があるか一目で分かり、すぐに取り出せます。リモコン、メガネ、爪切りなどの小物を定位置管理するのに有効です。
- フタのないボックスやカゴ: ブランケットや新聞、雑誌などをまとめておくのに便利です。
3. 「隠す収納」で見た目をすっきり
生活感が出やすい「必要」なモノは、扉付きの収納家具や、フタ付きのボックスなどを活用して隠してしまうと、リビング全体がすっきり見えます。
- 収納付き家具: オットマン(足置き)やベンチの中に収納できるタイプのものを選ぶと、収納場所を増やしながら家具としても使えます。
- デザイン性の高い収納ボックス: 収納したいモノのサイズに合ったボックスを用意し、種類別にまとめてから棚にしまうと、見た目も整います。布製や籐製など、リビングの雰囲気に合った素材を選ぶと良いでしょう。
リビングの場所別 片付けと収納のヒント
リビングの中でも特にモノが集まりやすい場所での「好き」と「必要」に基づいた片付け・収納のヒントをいくつかご紹介します。
- テレビ台周辺: リモコン(必要)、ゲーム機やその周辺機器(必要)、DVDやCD(好き/必要)、飾りたい小物(好き)などが集まりやすい場所です。引き出しや扉付き収納を活用して「必要」なモノを隠し、空いたスペースや棚に「好き」なモノを飾るようにメリハリをつけましょう。配線類はまとめて隠すと見た目がすっきりします。
- ソファ周辺: リモコン(必要)、読みかけの本や雑誌(必要)、ブランケット(必要)、クッション(好き/必要)などがあります。サイドテーブルに小さな引き出しを置いたり、ソファの横にバスケットを置いたりして、「必要」なモノの定位置を作ると便利です。
- 壁面収納・シェルフ: 家族写真(好き)、思い出の品(好き)、本(好き/必要)、書類(必要)、日用品のストック(必要)など、多様なモノが集まります。見せたい「好き」なモノは見える段に飾り、隠したい「必要」なモノはボックスに入れて下の段や扉付きスペースに収納するなど、ゾーニング(エリア分け)を意識すると整理しやすくなります。
無理なく続けるための小さな習慣
片付けや収納は一度行えば終わりではなく、日々の小さな習慣の積み重ねが大切です。体力的な負担を減らし、無理なく続けるためのヒントです。
- 「ついでにしまう」を意識する: 使ったモノを元の場所に戻す習慣をつけるだけで、散らかり方を大幅に減らせます。CMの間や、席を立つついでに、何か一つでも元の場所に戻すことを意識してみましょう。
- 「1日5分だけ」ルール: 「今日はここだけ」と場所を限定し、タイマーを使って5分や10分だけ片付けをする習慣をつけると、負担なく続けられます。引き出し一つ、棚一段など、小さな範囲から始めましょう。
- 定期的な見直しの機会を持つ: 季節の変わり目や、特別な日(誕生日や年末など)に合わせて、飾っている「好き」なモノや、収納している「必要」なモノを見直す時間を持つと、モノの停滞を防げます。
片付け後の心地よいリビング空間
「好き」なモノが心地よく飾られ、「必要」なモノが使いやすく収まっているリビングは、見た目がすっきりするだけでなく、心にもゆとりをもたらしてくれます。
- 掃除がしやすくなる: モノの量が減り、それぞれの定位置が決まることで、日々の掃除機がけや拭き掃除が格段に楽になります。
- 探し物の時間が減る: 「アレどこ?」と探す無駄な時間がなくなり、必要な時にすぐにモノを取り出せる快適さを実感できます。
- リラックスできる空間に: 視覚的なノイズが減り、お気に入りのモノに囲まれることで、自宅で過ごす時間がより豊かで心地よいものになります。趣味に没頭する、読書を楽しむ、大切な人とゆっくり話すなど、すっきりした空間で叶えたい過ごし方を想像してみましょう。
まとめ
リビングの片付けは、「好き」なモノは心地よく飾り、「必要」なモノは使いやすくしまうという、二つの視点を持つことで、より効果的に進められます。長年共に過ごしてきたモノと向き合うのは時に骨の折れる作業かもしれませんが、今回ご紹介した具体的なアイデアを参考に、ご自身のペースで、少しずつでも実践してみていただけたら幸いです。
片付けは、ただモノを整理するだけでなく、ご自身の今の暮らしを見つめ直し、これからをどう過ごしたいかを描くきっかけにもなります。すっきり整ったリビングで、心穏やかな時間をお過ごしください。