「好き」と「必要」で分けるキッチンの片付け:50代から始める無理しない方法
キッチンの片付け、どこから始めますか?
毎日の食事作りを支えるキッチンは、家の中でも特にモノが多い場所かもしれません。調理器具、食器、食品、調味料、保存容器…。長年暮らしていると、いつの間にかモノが増え、収納場所に収まりきらず、作業スペースが狭くなっている、というお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に、お子様が独立されて家族構成が変わったり、ご自身のライフスタイルが変化したりする50代からは、これまでのキッチンの使い方やモノの量を見直す良い機会です。しかし、「どこから手をつけていいか分からない」「一度にたくさん片付けるのは大変」「使っていないけど、いつか使うかも…」といった気持ちから、なかなか片付けが進まない、というお声もよく伺います。
このサイトでは、「好き」なモノと「必要」なモノを区別する考え方を大切にしながら、読者の皆様がご自身のペースで、無理なく片付けを進めるためのお手伝いをしたいと考えています。今回は、特にモノが増えやすく、毎日の暮らしに直結するキッチンの片付けに焦点を当てて、具体的な方法をご紹介します。
なぜキッチンのモノは増えやすいのでしょう?
キッチンのモノが増える背景には、いくつかの理由が考えられます。
- 「いつか使うかも」: 特売品や景品、頂き物など、「いつか使うかも」と思って保管しているうちに、存在を忘れてしまったり、傷んでしまったり。
- 思い出の品: お子様が小さかった頃に使っていた調理器具、旅行先で買ったご当地の食器など、使う機会はなくても捨てられないモノ。
- 機能別のアイテム: 同じような機能なのに、素材やサイズ違いで複数持っているフライパンやお鍋、お玉や菜箸。
- もらいものやセット品: 贈り物の食器セットや調理器具セットなどで、一部だけ使うけれど他は眠っているモノ。
- 収納の工夫不足: モノが増えても、収納方法を見直さずに詰め込んでしまい、どこに何があるか分からなくなる悪循環。
これらの理由が絡み合い、キッチンのスペースを圧迫し、毎日の料理や片付けの効率を下げてしまうのです。
キッチンのモノを「好き」と「必要」で分ける判断基準
いざ片付けを始めようと思っても、「これは必要?」「これは捨てるべき?」と判断に迷うことが多いものです。ここで、「好き」と「必要」という二つの基準で考えてみましょう。
1. 「必要」なモノの基準
これは、「今の暮らしで実際に使っているか」「特定の目的のために欠かせないか」という機能や使用頻度に基づいた基準です。
- 使用頻度: 週に一度以上使うモノは「必要」な可能性が高いでしょう。月に数回程度でも、特定の料理に必要なら必要です。
- 機能性: それがないと困る、他のモノで代用できない機能を持つモノは「必要」です。
- 状態: 壊れていないか、安全に使えるか。賞味期限や消費期限は切れていないか。
- 数: 同じ機能のモノを複数持っていても、実際にすべて使い回しているか。予備が必要なモノか。
具体的なチェックポイント: * この一年間で一度でも使いましたか? * それは壊れていませんか? * 他のモノで代用できますか? * それは本当にあなたの料理の頻度やスタイルに合っていますか?
2. 「好き」なモノの基準
これは、「それを持っていることで気持ちが満たされるか」「使う時に心地よさや喜びを感じるか」という感情や愛着に基づいた基準です。
- デザインや見た目: 見るだけで気分が上がる食器や調理器具。
- 使い心地: 手によく馴染む、使うのが楽しいと感じる道具。
- 思い出: 特定の出来事や人との繋がりを感じさせるモノ(ただし、これは後述する「捨てにくいモノ」として別途考えます)。
- 所有欲: 特に理由はないけれど、どうしても好きで手元に置いておきたいモノ。
具体的なチェックポイント: * それを見ると、使うと、どんな気持ちになりますか? * 持っているだけで幸せを感じますか? * たとえ使用頻度が低くても、手放したくないと強く思いますか?
「必要」でも「好き」でもないモノは?
「必要」でもなく、「好き」でもないモノは、手放すことを検討しましょう。例えば、「いつか使うかも」と思ってずっとしまい込んでいる食器、使い勝手が悪くてもらったお鍋、賞味期限が切れたままの調味料などです。
キッチンの場所別 片付け実践ガイド
キッチン全体を一度に片付けるのは大変です。引き出し一つ、棚一段など、小さな範囲に区切って始めましょう。ここでは、キッチンの主な場所ごとに、「好き」と「必要」の基準で仕分ける際のヒントをご紹介します。
1. 食器棚・カップボード
- 必要の基準: 普段使いの茶碗、お椀、皿、コップ。来客用でも年に数回使うモノ。家族の人数や来客の頻度に応じた適量か。
- 好きの基準: お気に入りのデザインのマグカップ、使うと気分が上がる特別な皿。
- 見直すモノ: 欠けている・割れている食器、セットでもらったけれど使わない食器、大量にある景品のコップ、昔の子供用食器(思い出の品は後述)。
実践のヒント: まず、食器を棚から全て出してみましょう。次に、普段使い(毎日〜週に数回使う)のモノを選び、「必要」ゾーンへ。次に、使う頻度は低いけれど、来客時や特別な料理に「必要」なモノを選びます。最後に、使う頻度は低いけれど、どうしても「好き」で手元に置きたいモノを選びましょう。残ったモノは、手放すことを検討します。
2. シンク下収納
- 必要の基準: 洗剤、スポンジ、ゴミ袋のストック。ボウル、ざる、食品用保存容器。
- 好きの基準: デザインがお気に入りの保存容器。
- 見直すモノ: 大量に溜まったレジ袋、使いかけで固まった洗剤、数の合わないタッパー蓋と本体、古い掃除用品。
実践のヒント: ここも一度全て出し、水拭きするなど簡単に掃除をしましょう。洗剤類、掃除用品、ボウル・ざる、保存容器など、種類ごとに分けてグルーピングします。「必要」な量だけを残し、残りは手放します。保存容器は、蓋と本体を合わせて数が合うか確認するのがポイントです。
3. コンロ下・引き出し収納
- 必要の基準: 鍋、フライパン、蓋、フライ返し、お玉、菜箸、包丁、まな板、調味料、油。
- 好きの基準: 思い入れのあるお気に入りの鍋、デザインの良いキッチンツール。
- 見直すモノ: 使っていない古い鍋・フライパン、焦げ付きが落ちない調理器具、数が多すぎるキッチンツール、期限切れの調味料、使いづらいもらい物のツール。
実践のヒント: フライパンや鍋は、今の家族構成や料理の頻度・量に合ったサイズと数か見直しましょう。キッチンツールは、使用頻度で分け、「必要」なモノだけを手元に。引き出しは、仕切り(ディバイダー)を使って、カトラリーやツールがごちゃつかないように整理すると使いやすくなります。調味料は、全て出して期限をチェックし、使わないモノは手放しましょう。
捨てにくい「思い出の品」との向き合い方
キッチンには、お子様が小さかった頃に使っていたお弁当箱、一緒に作ったお菓子の型、旅行先で買ったユニークなキッチン雑貨など、使う機会は少ないけれど、見るたびに思い出が蘇る品もあるでしょう。これらはまさに「好き」の基準の中でも、特に感情的な価値が高いモノです。
無理に全て手放す必要はありません。大切なのは、それらのモノとどう向き合うか、です。
- 思い出の品専用の場所を作る: キッチン以外の場所に、思い出の品をまとめて保管する箱やスペースを作りましょう。キッチンは「料理をする場所」として、機能性を重視します。
- 写真に残す: モノ自体は手放しても、写真に撮ってデジタル化したり、アルバムにしたりすることで、思い出は残せます。
- 形を変える: 例えば、古いエプロンや布巾を別のモノにリメイクするなど、形を変えて活用する方法もあります。
- 感謝して手放す: 「今までありがとう」と感謝の気持ちを込めて手放すことで、罪悪感を軽減できます。
全ての思い出の品を残すことは、かえって管理を難しくし、本来大切にしたい思い出の価値を薄れさせてしまうこともあります。本当に手元に置きたい、見るたびに温かい気持ちになれる厳選されたモノだけを残すのも一つの方法です。
無理なく片付けを続けるためのコツ
一度にキッチン全てを片付けようとすると、時間も体力も気力も必要で、挫折しやすくなります。特に体力に不安がある場合は、小さなステップで進めることが大切です。
- 「1日15分」ルール: 「今日はシンク下の引き出し一つだけ」「食器棚の一段だけ」のように、短時間で終わる小さな範囲を決めて取り組みましょう。毎日少しずつでも続けることで、着実にモノは減っていきます。
- 「一つ買ったら一つ手放す」ルール: 新しい調理器具や食器を買う時は、同じ種類のモノを一つ手放すように心がけましょう。モノがそれ以上増えるのを防げます。
- 完璧を目指さない: 全てのモノが完璧に整頓されている必要はありません。まずは使っていないモノを減らすことに焦点を当てましょう。
- 「一時置き場」を活用する: すぐに判断できないモノは、「一時置き場」と書いた箱などを用意してまとめておきます。期間を決めて(例えば1ヶ月後)、その箱の中身を見直しましょう。
- 誰かに相談する: 一人で抱え込まず、家族や友人に相談したり、一緒に取り組んだりするのも良い方法です。客観的な意見をもらうことで、判断しやすくなることもあります。
- 体調と相談する: 無理は禁物です。疲れている時や体調がすぐれない時は、片付けを休みましょう。ご自身の心と体の声を聞きながら進めることが、長く続ける秘訣です。
片付け後のキッチンで何が変わる?
キッチンの片付けが進むと、様々な良い変化が訪れます。
- 作業スペースの拡大: 不要なモノが減り、カウンターの上やシンク周りが広々と使えるようになります。下ごしらえや盛り付けが楽になります。
- 調理効率アップ: 必要なモノがすぐに取り出せるようになり、料理中の「あれどこ?」が減ります。動線がスムーズになり、調理時間が短縮されることも。
- 探し物がなくなる: どこに何があるか把握できるようになり、無駄なストック買いを防げます。
- 掃除が楽になる: モノが少ないと、拭き掃除などがしやすくなります。清潔な状態を保ちやすくなります。
- 安全性の向上: 足元や作業スペースの安全が確保され、転倒や怪我のリスクが減ります。
- 精神的なゆとり: すっきり片付いた空間は、視覚的なストレスを軽減し、心にゆとりをもたらします。「やらなきゃ」という焦りからも解放されます。
- 料理が楽しくなる: お気に入りのモノに囲まれ、使いやすいキッチンで料理をすることは、きっと毎日の楽しみになるはずです。
まとめ
キッチンの片付けは、単にモノを減らすだけでなく、ご自身の暮らしや食生活を見つめ直す良い機会です。「好き」なモノに囲まれ、「必要」なモノがすぐに使えるキッチンは、毎日の家事を心地よく、そして豊かにしてくれます。
一度に全てを終わらせようとせず、まずは小さな一歩から始めてみましょう。引き出し一つ、棚一段。無理のないペースで、「好き」と「必要」を基準にモノと向き合ってみてください。片付けが進むにつれて、きっと清々しい気持ちになり、キッチンがより居心地の良い空間に変わっていくのを実感できるはずです。
この情報が、皆様のキッチンの片付けのきっかけやヒントになれば幸いです。