日常使いのモノを「使う場所」の近くにしまう:「好き」「必要」で見つける片付け術
片付けてもすぐに散らかってしまう…そのお悩みはありませんか?
一生懸命片付けても、しばらくするとまたモノが散らばってしまう。特にリビングやキッチンなど、日常的に過ごす場所では、いつの間にか使ったモノが出しっぱなしになりがちです。この「片付けてもすぐ散らかる」というお悩みは、多くの方が経験されることかもしれません。
なぜ散らかってしまうのでしょうか。原因の一つとして、「使う場所」と「しまう場所」が離れていることが挙げられます。頻繁に使うモノなのに、しまう場所が遠かったり、複数の場所に分散していたりすると、使うたびに出し入れするのが億劫になり、ついその場に置いてしまうのです。
この課題を解決するためには、「日常使いのモノ」に焦点を当て、「好き」と「必要」の視点で見直し、使う場所の近くに「しまう場所」を作るというアプローチが効果的です。今回は、無理なく実践できるこの片付け術についてお話しします。
なぜ「使う場所」の近くに「しまう場所」が大切なのか
私たちの生活は、モノを取り出し、使い、しまう、という一連の動作の繰り返しです。この一連の動作がスムーズであればあるほど、モノは元の場所に戻されやすくなります。逆に、しまう場所が遠かったり、しまうアクション自体が面倒だったりすると、途中でその場に置きっぱなしになる可能性が高まります。
「使う場所」の近くに「しまう場所」を設けることは、この一連の動作におけるハードルを下げることにつながります。例えば、リビングのソファでよく使うリモコンや眼鏡、読みかけの本などを、すぐ手の届く場所に定位置としてしまえる場所があれば、使い終わった後に自然とそこへ戻す習慣がつきやすくなります。
このように動線を意識してモノの定位置を決めることで、部屋が散らかりにくくなるだけでなく、探し物をする時間も減り、時間と心にゆとりが生まれます。
「好き」と「必要」で見直す日常使いのモノの判断基準
それでは、日常使いのモノをどのように見直し、「使う場所」の近くにしまうモノと、そうでないモノに分ければ良いのでしょうか。ここで活きてくるのが、このサイトの基本コンセプトである「好き」と「必要」で分ける考え方です。
日常使いのモノにおける「好き」と「必要」は、このように捉えることができます。
- 「必要」なモノ: 日常生活を送る上で、機能的に不可欠なモノです。週に複数回、あるいは毎日必ず使うモノがこれに該当します。例えば、キッチンでの基本的な調理器具や食器、洗面所での洗顔料や歯ブラシ、玄関の鍵などが挙げられます。これらは主にその「機能」ゆえに必要とされます。
- 「好き」なモノ: 日常的に使うモノの中でも、デザインがお気に入りだったり、使うたびに心地よい気持ちになれたりするモノです。例えば、手に馴染むお気に入りのマグカップ、書き心地の良いペン、見ていると心が和む小さな飾りなどがこれに該当するでしょう。日常使いのモノの場合、「必要」であることに加えて「好き」という要素があると、より愛着を持って使うことができ、大切に扱おうという気持ちも自然と生まれます。
まずは、特定の場所(例えばリビングやキッチンなど)で日常的に使っているモノをざっと見渡してみましょう。そして、それぞれのモノが「必要」だから使っているのか、「好き」だから使っているのか、あるいはその両方なのか、少し考えてみてください。
もし「ほとんど使っていないけれど、いつか使うかも…」というモノが日常使いのモノの中に紛れ込んでいる場合は、それは「使う場所」の近くに置いておく必要はないかもしれません。そのモノの本来の「しまう場所」を改めて検討するか、本当に必要か「好き」かを再判断する必要があります。
場所別の実践方法例
具体的な場所を例に、「使う場所」と「しまう場所」を結びつける片付け方を見てみましょう。
リビング
リビングは、家族が集まり、それぞれが思い思いの時間を過ごす場所です。リモコン、読みかけの本、新聞、眼鏡、筆記用具、充電器など、実に様々なモノが日常的に使われます。
- 現状把握: まず、普段リビングでよく使うモノをリストアップしてみましょう。そして、それらをどこで、どのくらいの頻度で使っているかを確認します。
- 「好き」「必要」で分類: リストアップしたモノを、「好き」か「必要」かで分類します。例えば、よく使うけれど特に思い入れはないリモコンは「必要」、デザインがお気に入りのブランケットは「好き(かつ必要)」といった具合です。
- 「使う場所」の近くに「しまう場所」を作る:
- ソファで使うモノ(リモコン、眼鏡、読みかけの本)は、ソファの近くのサイドテーブル、マガジンラック、またはアームレストに引っ掛けられるポケットなどに定位置を作ります。
- テーブルで使うモノ(筆記用具、郵便物の一時置き)は、テーブルの引き出しや、デザイン性の良い小さな箱などを活用して、出しっぱなしにならないように定位置を設けます。
- 「好き」な小物は、飾り棚など「見て楽しむ」場所を定位置とし、「必要」な小物は機能的な収納スペースを定位置とするなど、目的別にしまう場所を変えることも有効です。
キッチン
キッチンは料理をするだけでなく、食事をしたり、家族と談笑したりと、リビング同様に多様な活動が行われる場所です。調理器具、調味料、食器、布巾、ゴミ袋など、多くのモノが使われます。
- 現状把握: コンロ周り、シンク下、食器棚、引き出しなど、普段キッチンでどのようなモノをどこで使っているか確認します。
- 「好き」「必要」で分類: 毎日使う菜箸やフライ返しは「必要」、お気に入りのコーヒーメーカーや、使うたびに気分が上がるデザインの計量カップなどは「好き(かつ必要)」のように分類します。
- 「使う場所」の近くに「しまう場所」を作る:
- コンロ周りで使う調味料や調理器具は、コンロの近くの引き出しや壁面収納、またはスパイスラックなどを活用します。
- シンク周りで使う洗剤やスポンジ、布巾などは、シンク下の引き出しや扉裏、あるいは見た目もすっきりするようであれば、シンク周りに使う分だけ置いておく定位置を決めます。
- 食器は、食卓から近い食器棚の下段に日常使いのモノをしまう、カップはコーヒーメーカーの近くに置くなど、使う頻度や動作に合わせてしまう場所を決めます。
- 「好き」で使う食器は、オープン棚に飾るように収納するのも良いでしょう。
玄関
玄関は靴だけでなく、鍵、傘、印鑑、郵便物、宅配便の受け取りに使うペンやカッターなど、様々なモノが出入りする場所です。
- 現状把握: 玄関やその近くで、出かける時や帰宅時にどのようなモノを使っているか確認します。
- 「好き」「必要」で分類: 鍵や印鑑は「必要」、お気に入りの傘立てや季節の飾り物は「好き」のように分類します。
- 「使う場所」の近くに「しまう場所」を作る:
- 鍵や印鑑は、靴箱の上に置くトレーや小さな引き出しを定位置にします。
- 宅配便受け取りセット(ペン、カッター)は、玄関ドア横のフックにかける、または靴箱に小さな収納ケースを置いてまとめておくなど、帰宅動線上で邪魔にならず、すぐに手に取れる場所に定位置を設けます。
- 「好き」な飾り物は、視界に入りやすく、かつ邪魔にならない靴箱の上や壁面に飾ります。
実践のための具体的なステップ
「よし、やってみよう」と思われたら、以下のステップで少しずつ進めてみてください。一度に家全体をやろうとすると大変ですから、まずは小さな場所から始めるのがおすすめです。
- 対象とする場所(または使う動作)を決める: 例えば「リビングのソファ周り」や「キッチンで料理をする時の動線」など、具体的に範囲を決めます。
- その場所で日常的に使っているモノを一時的に集める: 対象とした場所にある、日常使いのモノを一旦集めてみます。引き出しの中や棚の上など、定位置が決まっていないモノも集めます。
- 集めたモノを「好き」か「必要」かで分類する: 一つ一つのモノ手に取り、「これは好きだから使っているな」「これは必要だから使っているな」と考えながら分けていきます。この時、「どちらでもない」「ほとんど使っていない」というモノも出てくるはずです。
- 「どちらでもない」「ほとんど使っていない」モノを見直す: これらのモノは、「使う場所」の近くに置く優先順位は低いと考えられます。本当に必要か「好き」かを再判断し、不要であれば手放す、別の場所にしまう、というように対処します。思い出の品など、手放すのに迷うものは、すぐに決めず一時的に別の場所に置いておくのも良い方法です。(思い出の品の片付けについては別の記事もご参照ください。)
- 「好き」と「必要」に分類したモノの「使う場所」を明確にする: そのモノを普段どこで使っているかを具体的に確認します。
- 「使う場所」の近くに「しまう場所」を確保する: 使っている場所のすぐ近くに、モノを戻すためのスペースや収納場所を決めます。既存の引き出しや棚を活用したり、必要であれば小さな箱やバスケットを用意したりします。この時、すべてのモノに一つずつ完璧な定位置を決めるというよりは、「このグループはここ」というように、ざっくりとした場所を決めることから始めても大丈夫です。
- 使ったら必ず「使う場所」の近くの「しまう場所」に戻す習慣をつける: これが最も大切なステップです。使い終わったら、すぐに決めた「しまう場所」に戻すことを意識します。最初はどうしても忘れてしまうかもしれませんが、意識し続けることで徐々に習慣になっていきます。家族にも協力をお願いできるとさらに効果的です。
無理なく続けるためのヒント
この片付け術は、一度にすべてを完璧にする必要はありません。ご自身のペースで、無理なく続けることが大切です。
- 小さな成功体験を積み重ねる: 引き出し一つ、棚一段、あるいは特定の動作(例: 帰宅後の玄関)に関わるモノだけ、というように、小さな範囲から始めてみましょう。片付いた場所が増えることで達成感を得られ、次の場所に取り組むモチベーションになります。
- 完璧を目指さない: 最初からすべてのモノに最適な定位置を決めるのは難しいかもしれません。まずは大まかな場所を決めてみて、使いながら調整していくという柔軟な姿勢で取り組みましょう。
- 「使ったら戻す」を意識する習慣をゲーム感覚で: 「これはどこに戻すんだっけ?」と自分に問いかけながら、意識的に戻す練習をします。家族で協力し合うのも良いでしょう。
- 片付いた空間を味わう: 片付けが進み、「使う場所」の周りがすっきりしてきたら、その心地よさを実感してみてください。探し物が減った、掃除が楽になったなど、具体的な変化を感じることで、片付けを続けることのメリットを再確認できます。
片付け後の空間活用とメリット
「使う場所」の近くに「しまう場所」を作り、日常使いのモノが整うと、空間にゆとりが生まれます。このすっきりした空間をどのように活用できるでしょうか。
例えば、リビングのソファ周りが整えば、そこでゆったりと読書やお茶を楽しむスペースとして、より快適に過ごせるようになります。キッチンの作業スペースが広くなれば、料理がしやすくなるだけでなく、簡単な軽食をそこで楽しむカウンターとしても使えるかもしれません。玄関が整えば、出かける際にバタつかず、気持ち良く家を出ることができます。
モノを探す時間が減ることで、心にも余裕が生まれます。その余裕で、以前はできなかった趣味の時間にあてたり、ご家族との会話を楽しんだりすることもできるでしょう。片付けは単にモノを整理することだけでなく、日々の暮らし全体の質を高めることにつながるのです。
まとめ
片付けてもすぐに散らかってしまうというお悩みには、「使う場所」の近くに「しまう場所」を設けるというアプローチが有効です。日常使いのモノを「好き」と「必要」の視点で見直し、動線を意識してモノの定位置を決めることで、片付けが楽になり、散らかりにくい環境を作ることができます。
リビング、キッチン、玄関など、場所ごとの特性を踏まえながら、小さなステップで無理なく実践していくことが大切です。片付けを通して生まれたすっきりした空間は、日々の暮らしにゆとりと心地よさをもたらしてくれるはずです。ぜひ、ご自身のペースで、この「使う場所」と「しまう場所」を結びつける片付け術を試してみてください。